―それはいつもどおりに、母に罵られているときにやってきた。
まったくアンタは本当に何もできなくて!!
―そんな「いつも」を叩き壊す人たちが来た日の話。
「あ、後にして頂けますか?」
「X君はいますか?彼に伝えたいことがあって参ったものですが。」
「え!?あの馬鹿がなんかやらかしたんですか!本当にあの○○はなんの役にも立たないで」
「いや、ちょっとお母さんから話を伺いましょうか。」
「…は?ああ、それじゃちょっと立ち話も何ですから、こちらへ。」
※○○としたのは息子に使うにはあまりに酷い罵詈雑言だからです
とまあ、居間に案内されることになった。
正直X君の能力を云々語るよりも、母からも話を聞いたほうがよさそうと思っていた分
これは好都合な展開だった。
「粗茶ですが。」
と出された緑茶は、運命が今回のことを見越したのか茶柱が立っていた。
…じゃあ、話を切り出すか。
「私は、というか私達はこういうものでして。」
「はあ、『彗星竜召還チーム』ですか?」
「はい。チーム最強の切り札を呼ぶために、どうしても彼の能力が必要なんです。」
「彗星竜って…あの最強の竜ですか!!」
ちなみに彗星竜とは、シューティング・クェーサー・ドラゴンのことである。
「あんなすごすぎる人を呼ぶために、うちの○○見たいな子の能力が必要なんですか?」
「ではお聞きしますけど、なぜ彼の能力にそんな酷いことを言えるんですか。」
「当然でしょう!殴れないし戦っても勝てないし、能力上がったとか言っても何も上がってないし腐ってるし!
しかも戦えないのに立ち上がってくる割に相手に施しまでするんですよ!」
「ただそれが本人は戦えないとしても、とんでもない切り札を呼ぶ能力だと思いませんか。
たとえ本人だけで勝てなくても、勝てる仲間を何度も何度も呼ぶ力だと思ってますけどね。」
「そういえばお母さんも一時期はよく場に出てましたが。」
「そうですよ!過去までは!ただ力不足を感じて頑張ったんですよ!!」
「…それで頑張った結果、場に出る機会は失ったようなものですよね。」
「なぜですか!!
頑張っちゃいけないって言うんですか!!!」
その一言で完全にブチ切れたお母さんはとにかく持てるものを持って
目の前の私を叩いてきた。
正直武道を心得ていた分全部捌き切れたが、流石に包丁が飛んできた時には焦った。
その母親を組み伏せて、部屋を戻し話を始める。
「正直に言いましょう。頑張りが不十分すぎた分、誰にも呼ばれなくなりました。
実際、その『頑張る』前は、キラートマトやサモンプリーストからもお呼びありましたよね。」
「そうなんですよ!それがいつの間にか声がかからなくなって」
「そりゃそうですよ。対象から外れましたからね。呼べなくて当然。」
「!?」
キラートマト:破壊されたときにデッキから闇属性攻撃力1500以下を特殊召喚
サモンプリースト:手札の魔法を1枚捨てて、デッキから☆4を特殊召喚
「いや、それでもカオスエンドマスターさん位からは」
「対象に初めから対象に入りませんよ。」
カオスエンドマスター:戦闘勝利時にデッキから☆5以上で攻撃力1600以下を特殊召喚
「…いや、まだヘルウェイ・パトロールさんが」
「お母さん『悪魔族』じゃないでしょう?」
ヘルウェイ・パトロール:墓地にいるこのカードをリリースし、手札から攻撃力2000以下の悪魔族を特殊召喚
「お母さんがもっと努力して攻撃力が1800までいっていればまだ引く手数多。1950ならどこでも戦えた。
ただ効果も何もなく攻撃力1650じゃ話にもならない。」
「で…でもなんでサモンプリーストさんも呼んでくれないんですか?」
「優秀な仲間が増えすぎました。正直あなたでなくてもよくなったんです。しかも戦士じゃ光りようがない。
そしてさらに残念なことがある。」
「何ですか?」
「守備力200でなんで炎属性じゃないのかってことですよ。せめて炎なら真炎の爆発の対象になったのに。」
真炎の爆発:自分の墓地から守備力200の炎属性モンスターを可能な限り特殊召喚する。
「そ、そんな…私のしたことは全部無駄…」
「まあ、今居場所はないでしょう。正直『努力の仕方を間違えた』としか。
で、私が来たのはお子さんのスカウトについてです。」
「はっきり言います。お子さん、強すぎる。」
「は!?」
その言葉にお母さんは驚愕した。あきらかに数秒凍りついた。
それがはっきり解る。
「かつての強力カードにゾンビキャリアというモンスターがいました。息子さんの能力はそれを超えている。」
「あの算数すらできないんですか?なんで200より0が大きいんですか?」
「その0が4000オーバーさえ平気で呼び出せるとしたら?」
能力その1:1ターンに1度墓地のこのカードを自軍フィールドに特殊召還する。
「これのおかげでコストなしで場に出られます。アンデッド軍が一気に強くなったのも彼の原因です。」
「で、でも結局攻撃できないんですよ!?」
能力その2:このモンスターは攻撃できない。
「能力0のユニットが攻撃に回る必要がないですから。こんなペナルティないも同じです。
そしてもう一つ面白い能力がある。」
能力その3:1ターンに1度自身のチューナーを無効にする(ことをコストに)、
自身のレベルを+1して全てのプレイヤーは1ドローする。
「ドローできるんですよ。しかもこれのおかげでシンクロ、エクシーズ双方に対応。
さらに彼の基本がすでに異次元のレベルで強い!」
基本性能:☆1 闇 アンデッド/チューナー(効果) ATK0/DEF0
「…と、ざっとあげただけでもこれだけ強い。」
ここまで聞いた母親は事実を受け止められていないようで、完全に言葉を失った。
「あ、あの、おじさん、1週間前の話、やっぱりやってみようと思う。」
その息子が出てきて口を開いた。
「そっか。じゃあ、行こう。」
「じゃあね、母さん。単純に殴るだけが力じゃないんだよ。」
そしてここで出てきた人たちの能力はこちら。
母(昔)/ 闇属性 戦士/通常 ☆4 ATK1500/DEF200
母(今)/ 闇属性 戦士/通常 ☆4 ATK1650/DEF200
息子/闇属性 アンデッド・チューナー/効果 ☆1 ATK0/DEF0
①1ターンに一度、このカードが墓地にいる時このカードを特殊召喚できる。
②このモンスターは攻撃できない。
③1ターンに一度このカードのチューナーを無効にして、このカードのレベルを1上昇させ、全てのプレイヤーは1枚ドローする。
ちなみにテキスト書き直すと…
①[1/T][SS+]墓地のこのカードを特殊召喚する。
②剣×
③[1/T]このカードのチューナーを無効にする:このカードを☆+1と全てのプレイヤーは回+1。